クラウドの普及が、システム・インテグレーターのビジネスをどのように変えてゆくのだろうか。今日はその点について、整理してみようと思う。
クラウドの普及は、モノの販売や開発請負や運用受託などのヒトの提供に関わるビジネスを縮小するであろう事は、以前説明したとおりである。
しかし、直ちにこのような事態になるかというと、そんなことはないだろう。その背景には、クラウドが本質的に抱えるリスクや課題の存在がある。この点については、別のブログで詳しく解説したので、そちらをご覧いただきたい。
このようなリスクや課題は、ある程度時間とともに解消されるであろうから、クラウドそのものが、普及しないという結論は、早計であろう。
むしろ、クラウドが、本来持っている魅力、つまり、システム資源についての低コスト、迅速、ダイナミックな調達やアプリケーションの容易な利用などといっとた魅力が勝っており、リスクや課題を解消しようという力学が、強く働くであろう事は、間違えない。
まさに、この点にこそ、ビジネスの可能性が、存在している。具体的には、
1.クラウド・システムのリスクや課題を補完するサービス
2.クラウド・サービスのインテグレーション
3.SOA化支援サービス
などである。
1.クラウド・システムのリスクや課題を補完するサービス
運用管理の手間やコストを考えると、電子メールをSaaSに移行したいという企業も多いはずだ。しかし、クラウドのリスクにセキュリティやコンプライアンスが上げられる。このようなリスクを抱えながら、個人情報や企業機密をやり取りする電子メール・システムをSaaSに預けることに抵抗もあるだろう。
そこで、この課題を解消するひつとの手段として、個人認証は、人事システムと連動した自前のシステムで行い、認証を受けたIDのみをSaaS型電子メール・システムのAPIを介して、電子メールのログインを行えばいい。また、添付ファイルは、暗号化され、自社サーバーに保管。そのリンク情報のみを電子メールで送り、別途管理されている復号化のためのキーを使って手に入れる(Gmailを利用しているユニチャームのケース)。
このような対策により、クラウドのもつ課題を補完することができれば、それは、ひとつのビジネス・チャンスになりうるだろう。
2.クラウド・サービスのインテグレーション
クラウドの普及は、サービスの多様化を加速することになる。つまり、どのようなサービスを組み合わせれば、業務課題の解決に最適かとなると、これは大変複雑なものになることを意味する。そこには、クラウド上のサービスだけではなく、オンプレミス型のサービスやシステムをも含む、大きな組み合わせも考えなくてはならない。
その最適な組み合わせを考え、提案でき、構築できる高度なサービス・インテグレーターとしての役割は、必要となるだろう。
また、既存のクラウド・サービスを組み合わせ、お客様専用のサービス、あるいは、顧客視点で使い勝手を向上させるためのインタフェース型SaaSを立ちあけるという可能性もある。
他にも特定の専門領域に特化したクラウド・サービスを自ら運営し、それを売りにして、お客様の必要とするアプリケーション全体をインテグレーションするというビジネスも存在するだろう。
3.SOA化支援サービス
クラウドとSOAの関係については、いずれ詳しく述べようと思うが、とりあえず、クラウドの普及は、SOAの普及と不可分な関係にある。
従って、既存の社内のサービスをクラウドと連携させるためには、既存システムのSOA化というニーズが存在する。
長年使われ、各社各様に最適化された業務システム。これをクラウドがいかに便利であるからとって、一から作り変えたり、置き換えることは容易なことではない。しかし、クラウドのいいところは、うまく組み合わせて使いたい。
このような、ニーズに対応する手段が、SOAということてにる。ここにも、かなりのビジネス・チャンスが存在するのではないかと考えている。
この3つに共通することは、自らが必ずしも、クラウド・サービスのメジャープレイヤーを目指すのではないということだ。
メジャープレーヤーは、GoogleやAmazonなどにお任せしておき、それを利用しつつ、クラウドのビジネスを考えられないかという視点。
ご参考まで。