次の5つの質問に答えて下さい。
自社の商談や会議、現場の風景を思い浮かべながら、考えてみてください。「業界全体ではどうか」ではなく、「自分たちはどうか」という問いとして。
顧客が賢くなるほど、あなたの会社は必要とされるのでしょうか。それとも、相談する必要がなくなるのでしょうか。
これまで顧客は、何ができるのか、どう実現するのかが分からないから、あなたの会社に相談していました。話を聞き、調査し、提案する。その過程そのものに価値がありました。
しかし、顧客がAIと相談して要求を整理し、実現方法を比較し、簡単な試作品まで用意してきたら、商談の出発点は変わります。
「ここまでは確認しました。なぜ御社では、この期間と金額になるのですか」
試作品と本番システムは違います。だからこそ、その違いを具体的に説明できるかが問われます。「品質が違います」「実績があります」だけで、顧客は納得するでしょうか。
最近、構想段階の相談が減り、方針が決まった後で見積もりだけを求められることが増えていませんか。取引は続いていても、顧客の判断に関与する立場は、失われ始めているかもしれません。
顧客が本気で変わろうとしたとき、あなたの会社の主力事業は、その変革を支える側に立つのでしょうか。それとも、削減される側に立つのでしょうか。
部門ごとに異なる業務ルール。例外だらけの承認手続き。長年つぎ足してきた機能。それらを漏れなく要件にすれば、開発規模は大きくなります。顧客の要望に応え、社内でも大型受注として評価されるでしょう。
しかし、顧客がこう問い始めたらどうでしょうか。
「この業務は、本当に必要ですか」
「この例外をなくせば、標準サービスで済みませんか」
その瞬間、工数を積み上げていた機能は、作らずに済ませる対象になります。別の会社が「その仕組みを残すから高くなるのです」と提案すれば、自社の提案は、過去の非効率を高い費用で保存するものに見えてしまいます。
担当者は真面目に仕事をしたのでしょう。それでも、顧客が不要な仕事をなくすほど、自社の売上が減るという関係は残ります。
あなたの会社が成功と呼んでいるものを、顧客も同じ理由で成功と呼んでいますか。
要件を確定し、テストを終え、納期どおりに納品した。検収も済み、利益も確保できた。社内では成功案件として報告されました。
ところが顧客の現場では、手作業が減らず、期待した改善も起きていない。
「依頼されたとおりに作りました」
「業務を変えるのは、お客様の責任です」
契約上は正しくても、顧客の経営者が知りたいのは、投資したのに、なぜ事業がよくならなかったのかということです。AIで試作や修正を速くできる範囲が広がれば、「途中で確かめ、変えられなかったのか」という期待も強まるでしょう。
顧客は、必ずしも怒りません。支払いを済ませ、保守も続ける。その一方で、次の重要な案件では別の会社に声をかける。
自社には成功実績が積み上がり、顧客には「この会社に頼んでも事業は変わらない」という評価が積み上がる。そんな食い違いは起きていないでしょうか。
あなたの会社は、AIによって組織の能力を高めているのでしょうか。それとも、熟練者に依存したまま、その後継者が育たなくなっているのでしょうか。
AIを使えば、若手でも短時間でコードや資料を作れるようになります。熟練者が確認すれば案件は進み、生産性も上がったように見えます。
しかし、成果物を出せることと、その良否を判断できることは同じではありません。
なぜ、この設計なのか。どんな条件で動かなくなるのか。この修正は、どこに影響するのか。AIに聞き直すことはできても、その説明が正しいと、何を根拠に判断するのでしょうか。
自分で実装し、失敗し、指摘され、障害の原因を追う。その過程で育ってきた判断力は、いま、誰に受け継がれているでしょうか。
「あの人が見れば分かる」で仕事が回っているうちは、不足は見えません。その人が退職したとき、初めて気づくのかもしれません。人員は足りている。成果物も出てくる。しかし、正しいかどうかを判断できる人がいない、と。
いまの好業績は、これからも選ばれる力を示しているのでしょうか。それとも、過去に選ばれた結果が、時間差で売上になっているだけなのでしょうか。
売上は伸びている。受注残もある。人手が足りず、採用を急いでいる。そんなとき、事業の前提が揺らいでいると言われても、実感は湧かないかもしれません。
経営会議ではAIの重要性を語る。しかし現場では、今期の売上、目の前の納期、稼働率が優先される。「重要なのは分かるが、いまは手が回らない」。全員が職責を果たすほど、人も時間も既存事業に張り付いていきます。
その間に顧客は、別の会社との小さな案件で、新しい価格とスピードを経験しているかもしれません。既存契約が続く間、自社の数字は崩れません。変化が表面化するのは、次の見積もりや契約更新です。
「他社では、この金額と期間でできました。御社もできますよね」
そのとき、自社には従来の単価と工数を前提にした人員や管理階層が残っています。顧客の期待は変わったのに、自社の費用構造は変わっていない。その隔たりが、一気に利益を圧迫します。
この5つの問いに、あなたはどう答えたでしょうか。
考えるうちに、思い当たる顧客の言葉や、社内の会議の風景が浮かんだのではないでしょうか。別々の出来事だと思っていたことが、つながって見えてきたかもしれません。
難しいのは、いまの仕事が回っているうちに、その仕事を支えてきた前提の変化に気づくことです。売上が立ち、依頼があり、現場が忙しければ、立ち止まる理由は見つかりません。しかし、その間にも、顧客の選択肢や期待は変わっていきます。
「自分たちの強みは、これからも強みであり続けるのか」
過去の実績は説明できても、これから必要とされる理由を、自分の言葉で説明できるでしょうか。その答えが曖昧なまま、部下に進む方向を示し、顧客に将来を提案することに、不安はないでしょうか。
その不安を考え抜くには、材料が必要です。技術はどこまで進み、何ができるようになったのか。それによって顧客の行動や、対価を払う理由はどう変わるのか。個々のニュースを知るだけでは見えてこない、変化のつながりを理解する必要があります。
ITソリューション塾・第53期が、10月7日より開講します。
この塾では、この5つの問いへの答えを、皆さん自身が考えるための材料を提供します。2008年に開講して18年。これまでに約5,000名の皆さんが卒業しました。
いま、私たちは、これまでにない大きな変化に直面しています。第53期では、その背景にある技術の進化とビジネス環境の変化を、わかりやすく、つながりを持って解説します。そして、それを自分たちの顧客、仕事、収益の変化として捉えるためのお手伝いをしたいと思います。
この5つの問いのどこかで、言葉に詰まった。その問いが、自分の会社のこととして頭から離れない。そう感じたなら、ぜひ、その問いを持ってご参加ください。
これからも自分たちが必要とされる理由を、自分の言葉で語れるようになるために。皆さんとともに、考えていきたいと思います。
【募集開始】ITソリューション塾・第53期・10月7日(水)開講
AI時代を生き抜くための最新ITトレンドとビジネスの常識を手に入れる
「AIをどう使えばいいのか?」
いまなお、この問いに留まっているとすれば、AIの本質は、まだ見えていないのかもしれません。
18世紀後半の産業革命、20世紀半ばのIT革命。これらは、新しい技術が暮らしを便利にし、生産性を高めただけではありません。社会の仕組みや制度、働き方や雇用のかたち、ビジネスの常識、そして人々の生き方にまで及び、世の中を根底から変えてしまいました。
私たちはいま、AI革命の只中にいます。AIを数ある道具のひとつとして扱い、「どう使うか」を考えている限り、その真価を引き出すことはできないでしょう。問いは、すでに変わっています。
「AIで、ビジネスは、社会は、どう変わるのか?」
この問いに答えを持たないまま、システムを提案し、要件を定め、投資を判断する。それは、地図を持たずに航海に出るようなものです。
ITソリューション塾は、2008年の開講以来、約5000人の卒業生を送り出し、今年で18年目を迎えます。ユーザー企業の情報システム部門やDX推進の担当者、IT企業の営業やエンジニア、経営に携わる方々。立場は違っても、「ITの現在地を体系的に掴みたい」という思いは同じです。
この塾では、技術の名前を並べて覚えるのではなく、その背後にある仕組みと潮流を読み解きます。AIやクラウド、アジャイルやDevOpsといった個々のテーマが、なぜいま重要なのか、互いにどうつながっているのか。そのつながりが見えたとき、ニュースの見え方も、お客様との会話も、明日の判断も変わります。講師は、第一線の現場で今まさに実践している人たちです。教科書にはない、生きた知見をお伝えします。
そして、最後にもうひとつの問いを、皆さんとともに考えたいと思います。
「AIで、自分をどう変えるのか?」
技術の変化を眺める側にいるのか、変化を起こす側に立つのか。10週間後、その答えを自分の言葉で語れるようになっていただくこと。それが、この塾の目指すところです。
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日程 初回 2026年10月7日(水)〜最終回 12月16日(水) 毎週18:30〜20:30
※11月10日(火)のみ火曜開催
回数 全10回+特別補講
定員 120名
会場 オンライン
料金 ¥90,000-(税込 ¥99,000)
全期間の参加費と資料・教材を含む
※詳細はこちらをご覧ください。
『AI実践ドリル30日チャレンジ 仕事にすぐ効くAI活用』(日経BP)を紹介する連載が、日経クロステック(xTECH)に掲載されました。
第1回 ビジネスパーソンが生成AIの有償版を使うべきである理由
第2回 「事業変革推進室長」として生成AIで新規事業を企画する
第3回 AIの「魔法」をメール作成と悩みの「壁打ち」で体感
第4回 新規事業の「3段階の自立シナリオ」をAIで描く
第5回 AIにいきなり「斬新なアイデア」を求めるのは避けよ
本書は、これまでのAI本とは毛色が異なり、新規事業開発やマーケティングの実践ノウハウを、AIを使いながら体験的に学べる「ドリル」です。
AIの使い方を解説するのではなく、実際のビジネスの現場でどう使いこなし、新しい価値を生み出せばいいのかを、手を動かしながら身につけていただけます。
「AIをどう使うか」に留まっている限り、AIの真価は引き出せません。「AIでどう変わるか」、すなわちAIを前提として、仕事のやり方をどう変えればいいのか。それをお伝えしたくて書いた本です。まだの方は、ぜひご一読ください。
どうぞよろしくお願いいたします。




