「これまでの仕事のやり方では、将来はありません。だから君たちに未来を託したい。」
貴方は、新入社員達に自信を持って、この言葉を伝えることができるでしょうか。
クラウドやモバイル、IoTやビッグデータ、ロボットや人工知能など、ITはますます私たちの日常に深く関わろうとしています。その一方で、ビジネスのあり方は、大きく変わろうとしています。我が国のITサービスの産業規模は11兆円、そのうちシステム開発は、7兆円の規模を持っています。その多くが、工数ビジネスだと考えられます。
しかし、テクノロジーの進化とビジネス環境の変化は、「工数需要の減少」、「ITに求められる価値の変化」、「生産年齢人口の減少」を加速しつつあります。これについては、以下のブログで、詳しく書かせていだきました。よろしければ、ご覧下さい。
>> 「工数削減」から「工数喪失」へ!システムインテグレーション崩壊の本質
拙著「システムインテグレーション崩壊」でも述べましたが、ITの需要がなくなることはなく、今後ともその需要は高まります。一方で、システムインテグレーションの収益構造、そして、これまでのビジネスの作法は、崩壊せざるを得ません。そこに未来を期待することは、もはやできないのです。
この現実を新入社員達に正しく伝えているでしょうか。かれらが、これから自分の未来を託そうとしている会社の現実が、決して安泰なものではないことを正直に教えているでしょうか。有りもしない夢を語り、できもしない約束で、彼らをだましてはいないでしょうか。そんなことをしているとすれば、それは「詐欺」と同じです。
「君たちに夢を託す!」
彼らに、そう伝えるべきでしょう。過去の成功体験から抜け出せず、「まだ何とかなる」と先送りにしてきた人たちは、その事実を素直に認め、「自分達には無理だから、君たちに夢を託したい。」と真摯に伝えるべきです。
新入社員研修で、何を教えているのでしょうか。もはや役に立たなくなるであろう仕事のスキルを教えることに、お金と時間を費やすことにどれほどの価値があるのでしょう。
確かに、「基礎」は必要です。「常識」も学ばせるべきです。そこで終わってはいないでしょうか。未来のこと、そして、それを切り開く生き方や仕事のやり方をしっかりと伝え、考えさせているでしょうか。今すぐ現場に投入しても、取りあえず何とかなるような、表面的なスキルだけを教え、未来を教えないとすれば、きっと彼らもまた、未来を築くことはできません。
「革命が起きて政府を倒したとしても、その政府を作り出した組織的な思考様式がそのまま残っているのなら、その思考様式は、同じことを繰り返すだろう。(禅とオートバイ修理技術/ロバート・パーシング)」
簡単なことではないからこそ、彼らに未来を託すべきです。そのための機会を与えるべきなのです。
「2011年度にアメリカの小学校に入学した子どもたちの65%は、大学卒業時に今は存在していない職業に就くだろう」
デューク大学のキャシー・デビッドソン教授はこのように語っていました。つまり、16年後の2027年には、新たな職業に65%が従事しているということになります。今年の新入社員達が、働き盛りを向かえる頃です。そんな未来に私達ができることは、彼らに未来を託すことしかありません。
「これまでの仕事のやり方では、将来はありません。だから君たちに未来を託したい。君たちには、そのためにこの会社に入ってもらった。もちろん、現実の厳しさを学ばなければ、何をどうすれば良いかは分からないから、君たちはこれからしばらくは、そんな現実に直面してもらう。しかし、その先の未来は、君たちに託す。だから、常に現実を批判的に捉え、どうすれば良いかを考え続けて欲しい。」
そう伝えなくてはいけないでしょう。
ITの未来は、大きく開けています。そのことと、これまでのビジネスの作法が厳しいこととは、違う次元の話です。だから、その両者を正直に伝えなければなりません。
冒頭にも紹介した様々なテクノロジーが、私たちの日常や世の中にどんな価値や変化をもたらすのでしょうか。正解は分かりません。でも、いま見通せる可能性は伝えることはできます。それを伝えなくてはいけません。
貴方は、そこにどんな夢を描いていますか。例え自分にできなくても、彼らに託す夢を、自らの言葉で語らなくてはなりません。
彼らの自由で、そして、異次元の視点こそ、「過去の人たち」にはないものです。それを過去の成功体験で推し量り、「非常識だ」、「間違っている」、「無理だ」と決して言わないことです。
かつての常識は、もはや非常識となり、かつての正解はもはや成り立たず、テクノロジーは、かつての無理を現実のものにしようとしています。そのことを受け入れられない人が、精神論や過去の栄光の自慢話をすべきではないのです。
自らも未熟であったこと、仕事の厳しさ、それを乗り越えたことの達成感と成長の喜びは、是非伝えなくてはなりません。それこそが、経験を積んできたものでなければ語れないことです。しかし、「こういうやり方でやりなさい」は、余計なお世話です。
ITの未来を語れますか?それを語るのは、私たち大人達の責任なのです。
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こんな方に読んでいただきたい!
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目次
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- 第1章 クラウドコンピューティング
- 第2章 モバイルとウェアラブル
- 第3章 ITインフラ
- 第4章 IoTとビッグデータ
- 第5章 スマートマシン