ビジネスの現場で、ふと「あの人は本当に優秀だ」と圧倒されることはないでしょうか。状況の飲み込みが驚くほど速く、即座に的確な判断を下す。そんな姿を前にすると、自分には特別な才能がないと自信を失いそうになるかもしれません。
しかし、ビジネスにおける「優秀さ」とは、決して生まれ持った特別な才能ではありません。すべてをひとことで定義するのは難しいものの、ビジネスで結果を出し、周囲を牽引する「優秀な人」たちを観察していると、共通して備えている「3つの要件」が見えてきます。
それは、日々の意識を少し変えるだけで、誰にでも確実に身につけられるものです。今回は、真の優秀さを獲得するための3つの要件について紐解いていきます。
1. 「パターン」を知っている
ビジネスシーンにおいて、状況の把握や判断が圧倒的に速い人がいます。彼らは即座に状況を飲み込み、「何が起きているのか」「原因は何か」「どう行動すべきか」をパッと決めることができます。
なぜそんなことができるのでしょうか。
それは、彼らが「こういう状況なら、原因はこれで、こう動けばいい」という『パターン』を頭の中に持っているからです。
このパターンは、ただ長く働いて経験を積めば手に入るというものではありません。優秀な人は、個々の体験をそのままにしておくのではなく、「この出来事とあの出来事の共通点は何か?」と抽象化・一般化し、自分なりの「成功の方程式」や「法則の固まり」としてライブラリー化しているのです。
だからこそ、目の前の状況をそのパターンに当てはめることで思考を節約し、即座に答えを出すことができます。
もちろん、既存のパターンに当てはまらない未知の出来事も起こります。しかし彼らは、現実を素直に受け止め、「自分の持っているパターンと何が違うのか?」を考え、新たなパターンとして自分のライブラリーをアップデートしていきます。
孔子の言葉に「温故知新(故きを温ねて新しきを知る)」という有名な教えがあります。これは単に昔のことを学ぶという意味ではありません。「過去の経験や事例(故き)の底にある法則性を徹底的に探求し、そこから未知の状況(新しき)に対処する確かな知恵を導き出す」ことこそが、この言葉の真髄です。自分の持っている既存のパターンを起点に、常に新しい事象を解釈し直す姿勢は、まさにこの「温故知新」のプロセスそのものです。
【どうすれば磨かれるか】
「よし、パターンを見つけるぞ」と気合を入れて特別な時間を作る必要はありません。大切なのは、日々の業務の中に小さな振り返りのルーチンを組み込むことです。
例えば、日報を書くときや会議の終わりに、「なぜ今日はうまくいったのか(あるいは失敗したのか)」を1行だけ書き留めてみる。あるいは、帰り道に今日起きた出来事をひとつ思い出し、「前に似たようなことはなかったか」と考えてみる。
無茶な努力は続きません。歯磨きのように、常に関心を絶やさず「なぜ?」「どうして?」と問いかける小さな思考のクセを日常に溶け込ませること。その積み重ねが、やがて強固なパターンを生み出します。
2. 「基礎や基本」を抑えている
昨今、AIをまるで「魔法の杖」のように捉える向きもありますが、それは少し危険です。
AIは膨大なデータから次にどの言葉が相応しいかを「統計確率的」に導き、それをつなげているに過ぎないのです。そこには人間が持つような確固たる「論理性」が担保されているわけではありません。論理を理解しているのではなく、言葉のつながりが自然であることが優先されます。「流暢な表現で、もっともらしくウソをつく」というAIのハルシネーション(幻覚)は、この原理ゆえに起こります。
物事が起こる背景には、必ず「原理・原則」が存在します。そして、私たちの論理はこれが前提となります。
先に述べた「パターン」を効率よく増やしていくためにも、この原理・原則、すなわち「基礎や基本」を理解していることが非常に重要です。
『論語』の中に、「君子は本(もと)を務む。本立ちて道生ず」という一節があります。上に立つ優れた人物は、まず根本(基礎)をしっかりと固めることに努める。その根本が定まって初めて、進むべき正しい道が開けてくる、という意味です。
ビジネスにおいて、この「本(もと)」に該当するのが、基礎や基本です。情報が不完全な状況であっても、基礎という確固たる根本があれば、論理的に正しい予測を立て、進むべき道を見出すことができるのです。
【どうすれば磨かれるか】
まずは、学ぶための時間を自分の日常のルーチンとして、組み入れて下さい。例えば、朝の1時間、7時から8時は、自分のための時間ときめること。何を学ぶかは、その時々で興味のあることを学べばいいのです。ただ、IT界隈にいるならコンピューター・サイエンスやソフトウエア・エンジニアリングは、心がけて学ぶことです。それに加えて経営や経済、心理学など、学ぶべきことは多岐にわたりますが、一度にすべてを網羅しようとしないことです。
「分からない言葉に出会ったら、その場ですぐにスマートフォンで調べる」「通勤の15分だけ関連書籍を開く」「ポッドキャストなどの音声メディアを聴きながら歩く」といった習慣を身につけることもいいでしょう。大切なのは「何をどれだけ学んだか」ではなく、知的好奇心のアンテナを常に張り、関心を絶やさないこと。焦らずコツコツと学び続けるルーチンがあれば、基礎力は自ずと盤石なものになります。
3. 「トレンド」を捉えている
デジタルのトレンドや時代の変化は、表層だけを見れば激しく渦巻く「激流」のように見えます。次から次へと新しいバズワードが生まれ、多くの人がそれに一喜一憂し、大騒ぎをします。
しかし、川を想像してみてください。表面は波立って激流に見えても、川底の水(深層)は力強く、そして蕩々(とうとう)と流れているものです。
この「川底の深い流れ」こそが、2で触れた「基礎や基本」であり、大きな時代のうねりです。
俳人・松尾芭蕉が到達した理念に、「不易流行(ふえきりゅうこう)」という言葉があります。「いつまでも変わらない本質的なもの(不易)」を忘れず、同時に「新しく変化していくもの(流行)」を常に取り入れていくことの重要性を説いたものです。
これをビジネスに置き換えれば、川底の深層である「基礎・歴史・人間の根源的欲求」が『不易』であり、表層の激流である「トレンドや最新技術」が『流行』となります。
優秀な人は、ニュースやトレンドを表層の出来事としてただ消費しません。「いま話題のこの『流行』は、深層のどのような『不易』と結びついて生まれてきたのだろうか」と関連付けて考えます。表層と深層を行ったり来たりする思考ができるようになると、なぜその激流が起きているのかが理解でき、さらには「トレンドの未来を予見」することができるようになります。
この「予見する力」は、ビジネスにおいて最強の武器です。お客様の成功に直結する提案ができ、新規事業の成功を引き寄せ、来るべき変化に備えた組織改革を先導することができます。
【どうすれば磨かれるか】
トレンドを捉えるためには、「血眼になって貪欲に情報を集める」といった肩の力の入ったやり方ではなく、息をするように自然と情報に触れる仕組みを日常に作ることです。
通勤電車の中でニュースアプリを眺める、信頼できる専門家や企業のSNSアカウントをフォローしてタイムラインに流しておく、気になったキーワードを見つけたらメモアプリにストックしておく。そうした隙間時間の些細なルーチンを日常のリズムにすることです。
日々、情報(流行)のシャワーを浴びながら、「これはどんな本質(不易)と繋がっているのだろう」と少しだけ立ち止まって考える。その関心の持続が、やがて時代を読み解く鋭い感性へと育っていきます。
努力は必要であることも忘れずに
「パターンを知る」「基礎や基本を抑える」「トレンドを捉える」。
これらは決して、選ばれた天才にしかできないことではありません。
しかし、誤解していただきたくないのは、「一切の努力が不要だ」と言っているわけではないということです。努力は間違いなく必要です。
ただし、その努力とは、歯を食いしばって苦行に耐えるようなものではありません。自身の「思考や行動の様式を変え、これらを日常のルーチンとして組み入れるための努力」です。
これまでの無意識の習慣を変えるのですから、最初は意識的に取り組むエネルギーが要るでしょう。しかし、ひとたび日常に組み込まれてしまえば、もはやそこに特別な「努力」は要らなくなります。むしろ、日々の振り返りや情報への問いかけを「やらないことが気持ち悪い」「できないと残念に思う」という状態に必ず到達します。
どうか、その状態に至るまでの初期の努力、自らを変革する覚悟だけは持っておいてください。
たったそれだけの覚悟で、ビジネスパーソンとしての解像度は劇的に上がり、見える景色が変わってきます。一生の財産になると言っても過言ではありません。
日々の小さな積み重ねが、皆さん自身を「優秀なビジネスパーソン」へと押し上げるだけでなく、やがては社会全体をより良くしていく大きな力になるはずです。
そうそう、忘れてはならないことがひとつあります。それは、「世のため、人のため」になることをしようという心がけです。優秀になって、お金持ちになりたい、まわりの人に評価されたいとおもうことは、決して間違えではありませんが、それは結果としてついてくるものです。「世のため、人のため」を心がければ、結果として、あなたは評価され、お金もついてきます。何よりも、自分の行動に確信が生まれ、やっていることに喜びが生まれてきます。それこそが、日常のルーチンを維持するモチベーションとなるのです。
今、「AIをどう使うか」という段階は終わり、「AIと共にどう変わるか」が問われる時代へと、世の中は大きく変わりつつあります。変化はAIだけではありません。ITの潮流もまた、「レガシーIT」から「モダンIT」へと構造的な転換期を迎えています。
営業職であれエンジニア職であれ、新入社員や若手がこの「現実」を知らないまま現場に出ればどうなるでしょうか。お客様との会話は噛み合わず、信頼を得ることは難しいでしょう。その結果、せっかくの才能を持ちながら、仕事への自信を失ってしまうことになりかねません。
そのような不幸なミスマッチを少しでも減らしたい!この研修は、そんな想いから始まりました。
今年で10年目を迎えますが、これまでの経験を土台に、変化の速いIT常識の全体像を、基礎・基本やビジネスとの関連性とともに分かりやすく紐解きます。さらに、ITプロフェッショナルとしてどう役割を果たし、どう学び続けるべきか、AI時代に即した「すぐに使える実践ノウハウ」も解説します。
お客様の言葉が理解できる。社内の議論についていける。そして何より、仕事が楽しくなる。そんな「確かな自信」を、本研修を通じて手にしていただければと願っています。
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