「この取り組みは、DXと言えるでしょうか?」
企業研修の場で、ある受講者から投げかけられた質問です。あなたも、同じような疑問を抱いたことはありませんか?世はまさにDX時代。「DX」という言葉が飛び交う中で、自分の仕事がその流れに乗れているのか、不安になる気持ちはよく分かります。
しかし、もし私たちが「DXかどうか」というラベルにこだわりすぎているとしたら…? そのこだわりこそが、変革を阻む見えない壁になっているとしたら…?
この記事では、「DX」という言葉の呪縛からあなたを解き放ち、本当に成し遂げるべきことを見つけるための道筋を示します。
なぜ私たちは「DX」というラベルを求めるのか
- 「DX推進担当になったものの、何がDXなのか分からない」
- 「上司に『DXを進めろ』と言われたが、今の業務改善がDXと呼べるか自信がない」
- 「経営方針としてDXが示されたが、今までもデジタル化/IT化に取り組んで来たのに、いまさら何をすればいいのか」
「この取り組みはDXですか?」という問いの裏には、こうした切実な悩みがあるのかもしれません。第三者から「それはDXです」というお墨付きをもらえれば、自信を持って仕事を進められるし、社内への説明責任も果たせる。そう考えるのは、無理もないことでしょう。
しかし、一度立ち止まって考えてみましょう。そもそも、DXとは何だったでしょうか。
それは、『変化が速く予測不能な社会で競争優位性を確立し、生き残り続けるために、デジタルを前提としてビジネスモデルや組織そのものを根本から作り変える、継続的な挑戦』です。そのために、過去の成功体験やアナログ時代の常識と決別し、事業や組織、働き方をデジタル前提で再構築する。それがDXの本質です。
あなたの取り組みは、この大きな目的の実現を目指しているでしょうか?もしそうなら、自信を持ってください。それは紛れもなく、DXに向けた価値ある一歩です。ただ、大切なのは「DXかどうか」ではありません。「会社の未来をどう作り変えるか」という目的意識です。
「改善」と「変革」の違いとは何か
「ラベルはどうでもいいと言っても、日々の業務改善と何が違うんだ?」という声が聞こえてきそうです。ここで、「改善」と「変革」の違いを明確にしておく必要があります。両者は似て非なるものであり、この違いを理解することが、DXの本質を掴む鍵となります。
「改善」は、現状起点のアプローチです。現状の業務における問題点や非効率、顧客の不満などを課題として捉え、それを解決・解消することで、効率や品質を高め、最終的に売上や利益に貢献しようとします。あくまで今あるやり方を前提とした『現状の最適化』であり、その枠を超えることはありません。
一方、「変革」は、未来起点のアプローチです。 まず、「自分たちが5年後、10年後、さらにその先の未来においてどうなっていたいか」という理想の姿、つまり「あるべき姿」を描きます。そして、その「あるべき姿」と「現状」との間にある巨大なギャップを解決すべき課題として捉えるのです。そのギャップを埋めるためには、既存のやり方の延長線上では不十分であり、今の常識や前提そのものを疑い、事業や業務をまったく新しい形に作り変えることになります。
なぜ今、「変革」が必須なのか
多くの場合、地道な「改善」を積み重ね、そのやり方が限界に達したとき、「もうこれ以上どうしようもない。やり方を根本から変えよう!」という機運が高まり、「変革」へとつながります。
しかし、時として私たちは、そんな悠長なことを言っていられない状況に直面します。それが「パラダイムシフト(常識の大転換)」です。
近年のAIの急速な進化は、まさにそれです。仕事の進め方、ビジネスモデル、人々の思考様式までをも根底から覆すほどのインパクトをもたらしています。この巨大な変化の波に対応できなければ、企業の存続すら危うい。もはや「改善」で乗り切れるレベルではなく、「変革」せざるを得ないのです。
かつてインターネットの登場は「デジタル化」というパラダイムシフトをもたらしました。そして今、AIが再びそれを引き起こしています。もはや変革は、取り組むかどうかの『選択科目』ではなく、生き残るための『必須科目』なのです。この本質的な変化を前に、『これはDXですか?』という問いがいかに小さな論点であるか、そして、私たちが向き合うべき本当の課題がどこにあるのか、見えてきたのではないでしょうか。
真のDXは「評価待ちの文化」を壊すことから始まる
「この取り組みはDXですか?」 この問いのさらに奥深くを覗いてみると、より根深い問題が横たわっているように感じます。それは、『第三者に評価されること』に自分の存在意義を見出してしまう、私たちの少し悲しい姿なのかもしれません。まるで「こんなに頑張っている私を認めてください!」と叫んでいるかのようです。
もちろん、会社員である以上、評価は重要です。しかし、評価とは、自分から求めて得られるものではなく、行動や結果に対して他人が自然と与えるものです。自分の取り組みの意義を突き詰め、事業の成果に貢献することに集中すれば、評価は自ずと後からついてくるはずです。
もし、あなたの会社で「DX」の喧騒だけが大きく、本質的な変革が進まないのだとしたら、その原因は「評価待ち」「指示待ち」が染みついた企業風土そのものにあるのかもしれません。
だとしたら、私たちが本当に取り組むべきDXとは何でしょうか。
それは、新しいツールを導入することでも、DX推進部を立ち上げることでもありません。「他人の評価を気にしたり、前例を探したりする前に、まず自分たちで考え、未来のあるべき姿を描き、行動する」という自律的な文化を組織に根付かせること。
それこそが、DXの真のはじめの一歩であり、最も困難で、最も価値のある挑戦なのかもしれません。
ラベル探しは、もうやめにしましょう。あなたの手で、会社の未来を変える、本質的な一歩を踏み出す時です。
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2025年8月27日(水) ※1回のみ
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100名/回(オンライン/Zoom)
いずれも同じ内容です。
【第1回】 2025年6月10日(火)
【第2回】 2025年7月10日(木)
【第3回】 2025年8月20日(水)
【図解】これ1枚でわかる最新ITトレンド・改訂第5版
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